きれい好きハノイ?
都市化というのは急激な人口の増加により上下水道など都市としての機能の整備が間に合わないことから、もしくは超過密な居住を余儀なくされることから一時的に不衛生な状態を町にもたらすことがあります。。ハノイはベトナムの都市だ、と思っていただきたい。というのも訪れた外国人がハノイに都会の空気を感じるか不安に思うからですし、ホーチミン市民はハノイを田舎だと思いがちだからです。もしかして北部の田舎町よりハノイの市街地の方が不衛生なのではないかという疑いは私の個人的な感想だとしても、このハノイの不衛生感が都市化に伴うものならば、フランス占領下からゆっくり都市化している印象のハノイが文句なく都市と呼ばれるようになるのはいつなのか、そして都市化の負の面を克服するのはいつになるのか、などと近代都市として成熟していないのに負の面ばかり目立っているかのような酷薄なことを書いてしまいそうになりますが、私は基本的にハノイを好きなので安心してお読みください。
ハノイに限らず、アジア各国の旅行に際しては衛生面の環境の悪さが指摘されることがよくありますが、そんななかにあってベトナム人というのは清潔好き、と渡航時に読んだ某有名旅行ガイドにはありました。その根拠として挙げられていたのが、ベトナム人は地面に直接座ることを避けるためにとても座面の高さの低い小さな椅子に座る、という事実。???です。いえ、実際彼らは地面に直接座ることを不潔と考えていて、避けています。が、ベトナムを訪れたことのある人なら、あれが綺麗好きな印?という疑問が、それこそ湯水のように湧いてくるのではないでしょうか。なぜならベトナムは総じてほこりっぽく、そもそも地面に座ろうと考えること自体清潔感のかけらもないからです。加えてみんなが座りこんで路上カフェと洒落込んでいる歩道のすぐ脇、道路と歩道の段差付近や街路樹の足下はゴミ捨て場として使用されており、飲み残しやゴミは往年の高見盛よろしく景気良く道路に撒き(但し、垂直方向ではなく水平方向ですが)、その脇であんな座面の小さく低いものに座って飲食できる人たちがきれい好きなはずがない!と私自身、過去に強く思ったからです。
外で中国将棋を打つとき、路上でカフェをするとき、ベトナムの人はよくその小さなプラスチック製の椅子(日本人の間では風呂椅子と呼ばれる)を使います。風呂椅子がないとき、やっぱり地面に腰を下ろしたくない彼らは片方の靴を脱いで、その上に腰掛けます。もう地面に座るの止めたらいいのにと思いますが、割と頻繁にそんな光景を見ます。このとき片足が素足になっていることや、その足でまた靴を履いてしまうことや、その足で家に上がることはなぜかオッケーなようです。最近は止められることが多いですが、以前は子供の靴もオッケーでした。土足禁止のお店や家の中でも子供の靴はオッケーで、その頃からハノイに慣れ親しんでしまっている私は最近、逆にお店でベトナム人に注意されたりします。
暑さが厳しく、エアコンの普及率の高くないハノイにあって、朝夕に路上で涼を求める人の多いのは納得できなくもありません。暑さの厳しい夜にバイクを飛ばす家族連れも、バイクで向かい風を浴びている方が家にいるより涼しいからだと言います。実際、ハノイは暑いときほどみんなが表に出ていて活気があります。子供を遊ばせながら、井戸端会議に興じながら、外で長時間過ごす人たちが、地べたに座るようなことはしないとちょこっと小さな椅子に座るのは、意地らしいような、悪あがきのような。ハノイの人はきれい好きかと聞かれたら、即答でノー!って言いますが、意識は高いのでいまも少しずつ改善中です、とも付け加えます。
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