現在の我が家は、玄関ホールの端にある一階の一角とその部屋からのみ上がれる中二階に大家さんが住み、上の二階から六階までの各階一部屋ずつがそれぞれ貸しに出されている造りとしてはアパートというより貸間のようなところに住んでいます。これまでたくさんのちょっと微妙な賃貸物件を見てきた経験からいうとこういった形の貸間はよくありますが、この家は建造後の改築で無理やり貸間にしたのではなく、最初から外国人への賃貸を想定して建てられた建物なのでとても住み心地がよく、安心して暮らせています。余談ですが、以前紹介された同様の形式の貸間だと共用部分の階段と賃貸部分の部屋を仕切る壁が完全な後付で舞台装置の書き割りにドアのついたようなものだったり、最上階だから階段と部屋は一体ね、というものの、建物唯一のバルコニーはその部屋の真ん中を突っ切っていく形でついているので、大家さんが朝夕通り抜けること必至だったりして、少なくとも家族が落ち着いて暮らせる(玄関にドアがあって鍵までかかる)いまの家は輝いて見えました。またこの家では賃貸契約と同時にハウスキーピングの契約も結ぶことになっており、大家さんのお姉さんであるハウスキーパー、オアインさんが来てくれるのですが、おかげで家の中の様子も把握してくれてトータルでケアしてくれます。

さて、こんなベトナムべったり暮らしの我が家も日本に帰ることがあります。これを大家さんへの連絡役とハウスキーパーさんの両方を兼ねるオアインさんに報告しておかない手はありません。オアインさんは母や妹がハノイにくることや友達が遊びに来ることまで世間話などから知っていますし、休日に部屋着でうろうろしているところや子供をどやしているところまで知っているプライバシーなど存在しない状態なのです。オアインさんルールによると夫しかいないとき：掃除機以外の通常掃除、誰もいないとき：帰ってくる前に一度掃除機を使った通常の掃除のようです。今回は夫も一週間近く留守にします。その間、よろしくねーと言って別れました。

さて、、楽しい一時帰国も終わりハノイに帰ってきてみると、先にベトナムに帰った夫から空港で謎の報告が。「冷蔵庫に大量の野菜を置いていった？」？？一ヶ月近く家を空けるのにそんなはずはありません。家に帰ってみると確かに身に覚えのない葉物の野菜がコンパクトな我が家の冷蔵庫を完全に占拠していました。夫は一週間近く前に一人でハノイに戻ったので、自分でオアインさんに聞いてみてよと思いながらオアインさんに確認すると「田舎から来た親戚がお野菜を持ってきてくれたのを忘れてた」とのこと。冷蔵庫がいっぱいになったからうちのを使ったんだなと思い、深く考えずにそのお野菜をひと包みもらって帰りました。

が、そのあとにも次々と家の中に異変が。まず、洗面所の鏡が汚れている。飛沫状の汚れがついているのですが、これまでそんな汚れがついたことはなかったのに、家に帰ってくると汚れが目立っていました。枕がひとつだけ異常に臭う。これは夫についに加齢臭が出だしたんだなと思って、かわいそうにと思っていました。やたらに小さな氷ができている。製氷皿に半分くらいの水位で作ったと思われる氷が氷入れにストックされていて、私が作った氷の残りはなくなっていました。これらの異変を全部夫の仕業だと思って片付けていたのですが、一週間ほどして夫に確認してみると、臭いのする枕の置いてあるベッドでは寝ていなかったり、氷は全然使っていなかったりとつじつまのあわないことがぽろぽろと出てきました。

つまり、私たち家族の留守中に田舎から親戚が遊びにくる予定があったので、うちに泊め、冷蔵庫にお土産の野菜を置き忘れて帰ったということのようです。枕の臭いから想像するとおじいちゃん。。おばあちゃんと二人で出てきて、大家さんが親戚を泊めるのにうちほど適した条件のところは他にないでしょうし、うちの製氷皿は使いにくいから氷を作るの難しかったんだろうな。なるほど。でも、枕の臭いは勘弁なので、オアインさんに速攻で洗ってもらいました。何の臭いだろうと思って結構くんくん嗅いでしまったじゃないですか！オアインさんも検討がついたのか、すばやく替えの枕カバーを持ってきてくれました。夫の加齢臭が一週間で急激に進んだのでなくて本当に良かったです。

ベトナムで留守中の家に異変があったら、大家さんが留守宅を有効活用したのかも知れません(大家さんとなあなあな場合)。。