ベトナムの働く女性と働かない男性

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ベトナムの女性は働き者、男性は怠け者というのは一昔前のイメージでいまどきのベトナム人男性はばりばり働き、育児もするといいます。が、近所のおじさんたちをみているとそんな男性ばかりでもないような(失言)。40歳くらいまでの若い世代の傾向といえるような気がしますが、そういえば今年は終戦40周年。戦後世代の傾向といえるのかもしれません。

私の以前のハウスキーパーのチュオンさんについては何度か取り上げましたが、先日登場したセキュリティのトゥさんはチュオンさんの旦那さんでもあります。こまめにちょこちょこ動いて家事や仕事を片付けて回るチュオンさんと少なくともセキュリティの定位置、玄関ホールの受け付け席には座っているもののよほどでなければ腰を上げる気がないトゥさん。50代、戦中世代の彼らの間で翻弄された日々を懐かしみながら書いてみました。

ハノイの人の足、バイクは日常生活に欠かせない小回りの効く乗り物ですが、日本での運転免許すら持っていない私には高嶺の花、しかも交通ルールがあるんだかないんだかわからないここでの運転はこわい、ということでもっぱらバイクタクシー(セオム)を利用しています。ある日、セオムでチュオンさんの待つ自宅に乗り付けたところ、チュオンさんにセオムにいくら払っているか聞かれました。当時の自宅から幼稚園までは近かったので、片道1万ドン、往復2万ドンだよと答えると、チュオンさんから思わぬオファーが。同じ金額でトゥさんがバイクで送り迎えをするから、出かけるときは声をかけてというのです。当時セオムは決まったたまり場にいる人にお願いしているだけで自宅まで迎えにくるようにはお願いしていなかったので、そのオファーを受けることに問題はないのですが、それをトゥさんがいないところで決めていいものなのか。

翌朝、トゥさんの顔を伺ってみたものの絶対チュオンさんからなにも聞いてなさそうな顔でいつも通り挨拶されました。私が片言のベトナム語でそんなオファーをしたら、暑さで頭がおかしくなったと思われること請け合いです。昨日のチュオンさんとの話はなかったことにしてスルーすることに決めました。と、玄関ホール脇の自室から出てきたチュオンさんに呼び止められ、連れ戻されてしまいました。それからすっげー不服そうなトゥさんに乗っけてもらい登園したのですが、、ベトナムではセオムの営業に免許はいりません(バイクの免許は必要です)、そんな無免許営業のセオムのおじさんたちに実はなかなかテクニックがあるのだと気づかせてくれるトゥさんの運転テクニック。大通りのUターンに四苦八苦する。車線変更が必要になる指示は早めにしないと無理。走りながら道案内してもよく伝わらないので、いちいちバイクを止める。普段は5分ほどで着くはずの道のりを3倍近くかけてたどり着き、いつもどおりに家を出たので幼稚園には遅刻しました。

そんな私もトゥさんも微妙なセオム状態で往復すること数日。トゥさんは一日二往復しても4万ドンにしかならないこの仕事を明らかに面倒くさがっていて、雨が降りそうだからタクシーで行ってくれ、見送りのついでに買い物に寄るのはセキュリティの仕事に支障があるから帰る、買い物にはつきあえないけど片道だけの1万ドンの送りにはもっとつきあえないから行かないとどんどん理由をつけて断ろうとします。私としてはその理由はわからないでもないのですが、往復どこにも寄れないで帰る日が続くと買い物もしづらく、かつ、いままでのセオムさんが1万ドンの稼ぎでも喜んで乗せてくれていただけに明らかにいやそうな態度で、でかけるときに聞くまで実際に行ってくれるかどうかわからないトゥさんのセオムははっきりいってメリットが薄い、いや、ほぼない。いっそのことすっぱりセオムをやめてほしいと思うのですが、チュオンさんがいると不承不承でもバイクを出してくれたり、トゥさんが留守中でチュオンさんがいると電話でトゥさんを呼び戻してくれ(るものの一向に帰って来ないのでお迎えの時間に遅刻し)たりするなど完全にありがた迷惑でしかなくなってきました。

私もトゥさんもチュオンさんがいなければ送ってもらわずにスルーしたいのですが、あとでチュオンさんに見つかるとなんで乗っていかないんだと二人まとめてなんとなくしかられるというよくわからない事態に突入した頃、幼稚園が夏休みに入り、週三日程度のサマースクールにはいい加減つきあえないとトゥさんが言い出し、そのまま夏の間に我が家が引越してトゥさんのセオム業は完全に廃業となり、私もたぶんトゥさんもほっと胸をなでおろしたわけです。

ベトナム人女性の小さなところも動いて小銭も逃さない働き者の心とベトナム人男性のできれば余分な仕事は請けずに席に座ってテレビ観てたい心、そして実際にはその舵取りを強いベトナム人女性がしているにも関わらず、近代化(?)によっていくつかの仕事は女性の手を離れてしまったことにより起こる混乱、一昔前のベトナム家庭事情を垣間見た気分になった夏の一ヶ月間でした。

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