ハノイ歳時記-春-

公開日:  最終更新日:2015/05/10

ハノイの春、それはテト(旧正月)とともにやってきます。日本も昔はお正月とともに春がやってきて、春の到来と新しい年の始まりを家族で祝っていたんだなぁと思うと、お正月の意味を再発見したような気持ちになります。日本における太陰暦から太陽暦への転換は季語に実際の季節感とのずれが現れるなどいろいろなところに急激に暦の文化を放棄したことによる歪みを残してはいるものの、ここハノイの12月半ばから3月はじめまでの年末年始だから経済も仕事も交通も停滞していますがなにか?という姿勢を見ていると潔く太陽暦に移項してしまったのは英断だっただろうとも思います。季語がずれるのも文人の方の特権的季節感のような気がして私には面白く感じられます。他方、ハノイはこの季節、誰も彼もが交代に風邪をひいたり、寝込んだりする時期でもあり、今後、テトにも開いているお店や会社が更に増え、テトの重要性が薄れたとしても経済が停滞する時期なのに変わりはないかも知れません。

ハノイの春は概ね2月から4月までと言えます。テトを過ぎる頃までは寒さが厳しく、一体いつ暖かくなるの?と思っていると突然、今日から春!くらい暖かくもしくは暑くなります。これまで気温15℃前後、湿度80%前後で推移していたのが、湿度はほぼそのままに気温25℃前後に上がります。春?えぇ、春です。夏ではないその証拠に、部屋のあちこちがカビます。夏は気温が高すぎて発生しないカビが大量に発生することこそ、ハノイが春爛漫たる何よりの証拠。自宅で毎日、家の中のどこかが新しくカビていますが、どこでしょう!?というゲームをすることができます。エキサイティングすぎて倒れそうになります。大体はクローゼットのどこかで革製品や合板、電気コードなどのゴムがカビていますが、ひどいときは机の引き出しそのものや歯磨き粉がカビたりもします。

ハノイの季節の変わり目というのはなぜかとてもドラスティックで、夏じゃないの?という日が1週間ほど続いたあと、冬に戻ったような日がまた前触れなくやってきます。このときベトナム人の一糸乱れぬ衣替えっぷり(今日から半袖、今日はジャケット、と一斉に衣替えをしてくるのでちょっと驚きます。春の間は徐々に夏物が幅を効かせるものの冬物を完全にしまうこともできません)に毎回驚きます。冬に戻ったといっても、気温でいうと20℃は軽く超えています。つい先日まで27℃だったのに、急に23℃になると寒く感じてしまうんです。だんだんと暖かくなればきっとベストコンディションだったはずの気温を何故か肌寒く感じてしまう、この残念な感じはなんでしょう。ハノイの気温や湿度を月で平均してもあんまり意味がない気がします。 おまけに一度、高温多湿な状態になっているので、気温が下がった分湿度は上昇、我が家の室内でですが測定不能なほどの高湿度をマークすることになりますし(窓を開けても状況は改善しません、むしろ床が結露するから閉めるようにオアインさんに言われる有様(窓開ける前から結露してたさorz))、日本でいうところの春雨も降ります。春雨は最初、朝方に降るのですが、そのうち日中も音もなく降るようになり、断続的に1週間ほど降り続けます。この一連の変化の間、高すぎる湿度のせいで洗濯物が何日も乾かないという悪夢のような状態が続きます。乾かない4日前の洗濯物と洗いあがった今日の洗濯物がせめぎ合う物干し台、狭いスペースにたくさんの洗濯物がかかることで更に乾燥しにくくなり、新しく着る服も尽き果てる。これだけ湿っているとなにが乾いているのか湿っているのかわからなくなるものなのだと、ようやく乾いたと思って畳んだ洗濯物がしっっとり湿っていることに気づくことで理解するのです。湿った洗濯物をクローゼットにしまうと漏れなくカビが発生する無限ループが出来上がって本当に寝込みたくなるので、畳んだ洗濯物も再度干します。乾燥機を買った方がいいとより多くの人(多分夫に気づかせなくてはいけないのでしょうが、スペースの関係で我が家では叶わぬ夢です)が気づいてくれることを願いながら。

そして、暑いと寒いと朝は寒くて昼は暑いを繰り返すうちに、暑い日が続いて限界に達すると雨が降るというハノイの夏の黄金パターンが夏より短いパターンで現れるようになり、5月の訪れと共に本当の夏に突入します。こんなにめまぐるしく変わるハノイの春から夏までの気候のうちにほんの5日間ほど訪れる「朝は寒くて昼は暑い日」はハノイではごく貴重な爽やかな晴れ間で、新緑の火炎樹の細かい葉が澄み渡った青空に美しく栄え、ハノイでは普段あまり吹かない風も穏やかに吹き、それまでの曇り空や湿気でどんよりした気分も一掃されて、できないことは何もないという一種無敵感を感じるほどの気持ちのいい日で、これこそハノイの春の醍醐味だと思ってます。ちなみにこんな日は3日も続きません(気温が高くなりすぎて曇ります)し、春の季節全体で5日間ほどだと思います。また、そんなに気持ちがいいのは朝だけで、10時を過ぎる頃には日差しが強すぎたり、暑すぎたりします。

春の気候が悪いからこそ感動するハノイの春の日。私の友人、知人はハノイの夏を恐れて、春や秋にこの地を訪れることが多く、毎回どのような格好で来ればいいか聞かれるのですが、そのときベストと思われるアドバイスをするも毎回外してしまい、春コートをもてあましていたり、霧雨の中寒そうにしていたります(現在100%の確立で誤ったアドバイスをしています)。こうしてみてみるとハノイの天気は週変わりに変わっており、適切なアドバイスができないのも無理からぬことでしょう(まさかの正当化)。強いていうなら薄手の春ものインナーに春ものジャケットも1枚、でもかさばらないから夏物のインナーも日数分入れておいて!でしょうか。在住している者の気分としては桜の花咲く日本がうらやましい季節です。

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